前回に引き続き、サンゴのお話をさせていただきたいと思います。
「サンゴ、実は動物。」もご参照ください。
サンゴの生態を調べていたら、思っている以上に地球環境に大きく関与していることを知り、もう少し、掘り下げてみようと思いました。
サンゴの生態について、少しおさらい
・サンゴは動物、サンゴ礁は地形の名称
・サンゴは光合成をしない。共生している植物プランクトンの一種である「褐虫藻」が光合成をする
・サンゴの役割は
- CO₂の濃度調整
- 海の浄化
- 天然の防波堤
今、危機的状況とみられるのがサンゴの白化現象。
何も知らないで、真っ白なサンゴを観たら、きれいと思うかもしれませんが、実はこのサンゴの白化が続いたら、サンゴは死に至ります。
世界のサンゴの白化の現状です。世界的に平均では64%、東南アジアではなんと94%が危機的状況に陥っています。
地域 | 総面積(千km2) | 危機にある面積(%) |
中東 | 14.4 | 65 |
大西洋 | 25.8 | 75 |
インド洋 | 31.5 | 66 |
東南アジア | 69.6 | 94 |
太平洋 | 66.0 | 48 |
オーストラリア | 42.3 | 14 |
(モルディブ) | 5.3 | 38 |
(フィリピン) | 22.5 | 98 |
(ハワイ) | 3.8 | 17 |
世界計 | 249.7 | 61 |
白化現象は、温暖化などで水温が上昇し、褐虫藻の光合成回路が破壊されたことで発生した活性酸素がサンゴの細胞を破壊するため、サンゴの免疫システムが働いて褐虫藻を放出するために起こります。もともとサンゴそのものには色がなく、半透明。私たちが見ているきれいなサンゴの色は褐虫藻の色。
その、サンゴと共生している褐虫藻が離れていくので、サンゴの白い骨格が透けて見えるから白く見えるのです。
光合成をしている褐虫藻がいなくなると、そこからエネルギーを得て生活しているサンゴはエネルギーを受け取ることができず、その結果死滅してしまいます。
この白化現象の大きな原因のひとつがCO₂排出による海水温度の上昇です。
サンゴ礁は「海のゆりかご」「海の熱帯林」、「海のオアシス」などと呼ばれ、豊かな海を形成するのに欠かせない存在。
魚の住みかや産卵場所、稚魚が育つ場、エサ場などの役割があります。
サンゴ礁の周りには、海の生物の約3分の1である93,000種以上の動植物が生息していると言われていますが、海水温が上昇し、サンゴが死滅することで、そこで生息している小魚たちがいなくなりますし、サンゴに卵を産み付ける魚は種として残っていけなくなります。そして、食物連鎖の関係で、小魚→中型の魚→大型の魚とどんどん減少。
マイクロプラスティック増加の影響も相まって、私たちの食卓から魚が消えてしまう可能性があり、食糧問題は農作物だけの問題ではなく、魚介類も深刻な問題となっています。
マイクロプラスティックに関するコラムはこちら。
サンゴが生活に及ぼす影響は食糧だけの問題ではなく、大きな懸念として、地球環境問題にも大きく関与しています。
先ほど書いたように、地球温暖化がサンゴの死滅の原因ではありますが、サンゴの死滅がまた地球温暖化をもたらすという悪循環に陥っているのです。
サンゴと共生している褐虫藻は光合成により、水中の二酸化炭素を吸い、酸素を生み出す役割も担っていますが、サンゴ礁におけるCO₂吸収率は、1㎡あたり4.3kg/年と言われており、熱帯雨林に匹敵するほどのCO₂を体内に留めているとも言われているので、サンゴの白化による地球温暖化への影響は想像以上に大きいのです。しかも温暖化で海水温が上昇すると、またサンゴは白化。
この悪循環により、地球温暖化がますます進むことになります。
海洋環境問題を抑えるためにも、サンゴ礁の存在は重要な役割を担っているのがお分かりいただけたでしょうか?
陸地に住む私たちの生活と遠く離れた海の中のサンゴがどう結びつくのかなかなかイメージできませんでしたが、実は大きく影響を受けるし、影響を与えているのです。
サンゴの死滅の原因は、海水温の上昇による白化以外に、他生物による被害も挙げられます。
食害生物であるオニヒトデなどによる被害が多くあげられますが、私たち人間が事の発端になっているサンゴ死滅の原因として、生活排水流出による栄養塩流出や開発事業・農地からの赤土流出、工場排水などからの化学物質流出が挙げられますが、こんなところにも要因があります。
例えば、東南アジアのある国では、ナポレオンフィッシュという高級魚を捕獲するために、シアン化合物いわゆる青酸カリを使っている地域もあります。毒薬である青酸カリがサンゴに悪影響を及ぼすことは明確ですし、その人たちが食べるためではないことも想像がつきます。
もう一つは、サメの捕り過ぎ。
最近フカヒレ目当てのサメの乱獲が進み、サメが減少する要因になっています。サメには漁獲制限を設けていない国が多く、ほぼ取り放題の状態です。
そんなことで?って思うかもしれませんが、そんなことでです。一人ではなく、多くの方がそうすることで、私たち個人は驚くほどの影響を与えるその一端を担うことになります。
サメという上位捕食者がいなくなると、フエダイのような中位捕食者が増大し、ブダイのような草食魚の数が減少。藻を食べるブダイがいなくなると、サンゴの周りで藻が過剰に繁殖し、褐虫藻の生育に影響し、その結果、サンゴが生きていけなくなります。
サンゴの死滅により、魚が減ってくると、さらに違法な乱獲も増えてくるでしょう。その結果、私たちは生態系をもっと壊していくことになります。
生態系のバランス。その絶妙なバランスを崩すのが、いつも私たち人類。
こういうのを知ると、今の地球にとって、私たちは害でしかないということを思い知らされます。
SDGsを謳う企業が増えてきてはいますが、果たしてどこまで私たちは環境問題が自分事になっているのでしょうか?
インディアンは7代先のことを考えて生活していると言いますが、私たちは今、目の前のことしか見えていないのではないでしょうか?
先日もiPhone14の販売日に多くの人が行列を作っていました。その人のコメントが「もう次のiPhoneを待っている」との内容。
今の欲求を満たすだけに囚われ過ぎて、豊かさと言うものを捉え間違っているように思えてなりません。
今日、日本列島は大型台風で各地に襲われていますが、この台風が大きすぎると、防波堤の役割をしてくれているサンゴが折れたり傷つけられたりしますが、その一方で、海水温度を調節し、サンゴの生育環境を大きな力で良くするという恩恵ももたらしてくれます。
自然は地球レベルで循環しています。
動物も植物も。
素晴らしいバランスでうまく調和が整っている。
その調和の中に私たち人類もいるはずなのです。
今回、サンゴに意識を向けることで、意識すらしていない私たちの行為が新たに別の環境問題に大きく影響していることを知りました。
高度経済成長の頃から始まった使い捨て時代。
たくさん作って、たくさん消費。
この代償が今じわじわと私たちの首を絞めているように思います。
マイクロプラスティックの話もサンゴのことも遠いところの話ではないし、何度もコラムで書かれている農の問題、食の問題は今本当に深刻化しています。
台風の大型化もゲリラ豪雨も地球温暖化が原因だとしたらどうでしょう?
今、何が起こっているのか?その結果どういうことになっていくのか?私たちに何ができるのだろうか?
そういう視点も持つ必要があるように思います。
次女が趣味でダイビングをしていて、よく海の写真を見せてくれます。ダイバーたちは海の変化を間の当たりにしていて、口をそろえて「海が変わった」と話すそうです。写真を通して海の保全のために働きかけている人もたくさんいるようです。
何ががきっかけでもいいと思います。地球に対して、環境に対してもっと個人が関心を持ちたいものです。
地球レベルでの環境問題は大きすぎて、なかなかイメージがつかず、自分事になりませんから、身近なことから考えましょう。
水のことや私たちが不要とレッテルを貼ったモノたちのごみの行く末など。
弊社地球Laboでは、海を汚さないように、洗剤の使用量を削減できる活水器を取り扱っています。
またAgriPoucher®シリーズのコンポストは使う人が増えれば増えるだけ、生ごみが削減され、ごみ焼却におけるCO2削減に貢献します。
皮膚につける商品に関しても、人体にもサンゴにも害を及ぼさない成分しか入っていないもののみを取り扱っています。生活の中で、ただ使うことが地球にやさしい。何だか気持ちがいい。そんな気持ちにさせてくれるものばかり。
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また、製品を販売して終わりではなく、それを通して一緒に考えるワークショップなども開催しています。このコラムの発信もまた皆様の気づきのきっかけになればうれしいです。
地球は私たちの大きなおうち。
そのことは常に頭の隅においておきたいと思います。
最後に私たちがサンゴのためにすぐにできることを書き添えておきます。
大切だと知ったけど、何をどうしたらいいのかわからないと行動に移せないので。
私たちができることって、小さなことかもしれません。
でも小さな環境によくないことをずっとやってきて、その代償が来ているのだとしたら、取り返しのつかなくなる前に、小さなことをやり続けていくしかないのです。
下記参考になさってください。
・洗濯や食器洗い、お風呂で使用する合成洗剤を減らす(なくす)
・生活排水として油をそのまま流さない
・生ごみを捨てる際にはしっかり水を切る。
もしくはコンポストを利用する
・ゴミをポイ捨てしない
・日焼け止めには人体のも環境にも優しい天然成分由来のものを使う。
・ムダな電気は使わない。
・SNSやWSを活用し、発信して、知らない人に知ってもらう
以上、もっと書きたいことがありましたが、うまくまとまらないので、この辺で。
他にもこのHPには学べるページがたくさんございますので、お時間が許す限り、気になるところをぜひチェックしてくださいね。それではまた。