4月22日はアースデイでした。
1969年に国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)によって提起され、翌年の1970年にアメリカのゲイロード・ネルソン上院議員の呼びかけで「環境問題についての討論集会」が開催されました。そして、集会が開かれた4月22日をアースデイと制定。
同年の後半には環境庁ができ、そこから急激に広まったこのイベントは、今では100以上の国々でバラエティに富んだ形で開催され、10億人の人が参加していると言います。
1970年は初めての開催にもかかわらず、実に2000万人ものアメリカ市民が参加したそうです。参加者の中には国会議員の姿もあり、地球環境問題に関する演説などもされました。国会も休会となり、国全体での取り組みになったとのことです。
日本ではその約20年後の1990年あたりから取り組みが始まったとされています。
今回は先日のアースデイにちなんで、環境問題を取り上げていきたいと思います。
歴史が浅い地球環境問題への取り組み
地球環境問題が注目され出したのは、実は意外と最近のことで、1960年代に入ってからでそれまではほとんど注目されていませんでした。
今からちょうど60年前の1962年。
一冊の本が出版され後に世界的なベストセラーとなります。
レイチェル・カーソンが書いた「沈黙の春」です。
当時はDDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)の散布が盛んに行われていたころでした。
DDTは有機系塩素の農薬で、ドイツの科学者であるパウル・ヘルマン・ミュラーによってDDTに強力な殺虫効果があることが発見され、その後、ミュラーはこのことによりノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
ヒトや家畜、農作物に対しても無害であるとされ、虫を媒介とする伝染病に効果があると、広く使われるようになったのです。
実際に、イタリアのナポリでは、第二次世界大戦中に全ナポリ市民に対しての散布で、シラミを媒体として広がった発疹チフスを抑えることに成功しています。また、マラリアを媒介するハマダラカにも有効とされ、DDTの散布によりマラリアの感染者が減少したというデータもあります。
日本でも戦争直後にシラミの防疫策として、アメリカ軍が持ち込んだDDTを空中散布したり、粉末を子供の頭に吹きかけるなどの利用がされていました。
ところが、その後の1957年、生物学者のレイチェル・カーソンに一通の手紙が届きます。
それは、DDTが散布されている地域で鳥が死んでいるという衝撃的な内容でした。
調べてみると、元々は害虫を駆除する目的で使われていた農薬の毒性が、植物からミミズに、ミミズから小鳥にと食物連鎖の中の捕食者へ濃縮されていき、その事が生態系に大きな影響を与えていることが分かったのです。このことは単なる害虫駆除ではなく、害虫を駆除するために多くの種類の生物の命を奪うことになり、やがては人間にも影響が及ぶことになります。
このことは科学的な根拠を示すだけでなく、誰にでも理解できるように、広く一般的に知られるべきだと、彼女は考えました。
このままでは地球は汚染されてしまう。
春が来ても小鳥は鳴かず、世界は沈黙に包まれるだろう。
このような状況に警鐘を鳴らすため、前述の「沈黙の春」は出版されました。
執筆当初は彼女が女性であることや、学者として扱われていなかったこともあり、農薬会社をはじめ、世間から大バッシングをされますが、この本を読んだジョン・F・ケネディ大統領によるバックアップが始まると世の中の論調は一変。
結果的にDDTは規制の対象となりました。
そして、最終的には「沈黙の春」が環境問題を考える、とても大きなきっかけとなり、その延長線上でアースデイが始まりました。
日本の外務省のホームページによると、現在、問題とされている環境問題は、大きく分けて以下の7つです。
- 海洋環境保全
- 化学物質・有害廃棄物の越境移動
- オゾン層の保護
- 生物多様性
- 野生動植物
- 森林、砂漠化
- 酸性雨
例えば、海洋環境保全はそのまま海の環境を守るということですが、 森林、砂漠化問題と生物多様性との関係性はとても深いものになります。
以前、こちらのコラムで、森づくりをすることが海をきれいにし、生物多様性を作り出していることに触れました。→ https://chikyu-labo.com/森づくりは地球づくり/
5番目に記載がある野生動植物は主に絶滅危惧種の内容となりますが、結局のところ、生物の多様性が失われると生態系のバランスが崩れ、絶滅危惧種もより追い詰められる状況になっていきます。
また、化学物質・有害廃棄物の越境移動もまた海洋環境保全やその他の項目に大きな影響を与えるということは、少し深く考えてみると想像がつくことです。
人間が意図的に運ばなくても、例えば、地表に撒かれた有害な化学物質はじわじわと土の中に染み込みながら、やがて地下水脈に辿り着くと、川に流れ込んで海へと放出されて行きます。その間に分解者である微生物も含めた生態系に影響を与えていることになります。つまり、それぞれが単独で存在するのではなく、全部繋がっていることになるのです。
このことは、逆を言えば、ちょっとした地球に配慮する取り組みが、他の問題への取り組みにも良い影響を与えることにならないでしょうか?マイボトルを持ち歩くことがプラスチックごみを減らすことになり、その事は海に流れ着く海洋プラスチックごみを出さないことになったり、ごみを処理するために使われる資源を減らすことにもなります。また、プラスチックごみが海に流れ着かないということは、海の生態系を守ることに繋がり、海の生物を捕食する者にとっても無駄に影響を受けなくても済むことになります。この流れは、まるで静かな水面に小石を投げ入れて広がる波紋のようです。負のスパイラルはそのまま大きな負のスパイラルへ。逆もまた然り。これも1つの循環の仕組みです。
私たちは目の前で起きていることに意識を奪われがちですが、より深く考えてみると、地球環境の為にとった行動が、実は地球にとって一石二鳥どころでは済まない貢献をしていることになります。環境問題はとても大きく重いテーマではなく、本当は楽しい取り組みになってきます。環境問題に対して自分は何ができるのかは悩む事ではなく、例えば、ごみを減らすことや、環境に影響を与えないような洗剤に変える、マイバックやマイボトルを持つなど、今からでもできることをやっていけば良いのではないかと思います。
人間が道具を使うようになり、道具から機械へと使う物が変わってくると、今度はそこに化石燃料が活用されることになって、そこから爆発的に環境が汚染されるようになってきました。
元々、地球には自浄作用がありましたが、我々人間が便利さを追い求めるあまり、自浄作用が追いつかずに破壊を進める状態になっていました。
人間がそうしたなら、今度は人間が責任を持って元に戻さないといけない。
まさに、リジェネレーション(新たなる再生)に向けて動き出す時です。
私たちが生きていくためには、地球が必要です。でも、ここで少しだけ考えてみましょう。
もしも、地球が大きな生命体だと考えた時に、地球は私たちを必要とするのでしょうか?
地球に必要とされる存在となり、その輪を広げて行きたい。
そのためにも私たち地球Laboは前進し続けます。